長々と書いて参りましたベスト仁王大賞2023ですがやっと最終章です。ぶっちゃけこの章だけでもいいのですがせっかく書いたので参之章もお読みください。
さて、オーラス最終章をどうぞ。
◆エマージェンシー部門
風雨にさらされる仁王像は数ある仏像のなかでもトップクラスに朽ちやすい存在です。そしてなぜか修復が後回しになりがちな尊格でもあります。
愛知県稲沢市 長光寺(8月20日)
千葉県流山市 清瀧院(7月31日)
静岡県焼津市 法華寺(10月24日)
吽形像の首がご覧のようになっていました。早く直るといいなあ。
徳島県神山町 悲願寺(10月29日)
◆堂内安置部門
こちらは居場所の方がなくなったパターンです。仁王門がなんらかの理由でなくなり、その後残された門番がお堂に移動。お堂に移動。語呂が良いので二回言いました。専用ブースがなくとも警備を怠らない、そんな働き者の仁王さまを紹介する部門です。何気に数が多いです。
福島県いわき市 勿来阿弥陀堂(9月13日)
静岡県三島市 妙法華寺(10月23日)
静岡県静岡市 建穂寺観音堂(10月24日)
静岡市の建穗(たきょう)寺観音堂の両脇を護る金剛力士像(左)です。寛政3年(1791)の造立と伝えられているとの事ですが、そこはかとなく漂う京仏師の技。そこで寛政9年七条仏所31代康朝作の秋田天徳寺の像と比べてみますと作風がよく似ています。SNSで運慶研究の第一人者であられる山本勉先生に教えて頂いたのですが、この像は「寛政3年11月、大仏師八木光慶(洛之洞院住)と森田荘司の作」と判明しているとのこと。康朝の作ではなかったものの同じ時代の同じ慶派の流れを汲む京仏師の作ということで近い作風になったのだなと思います。
新潟県長岡市 安禅寺(9月22日)
安禅寺は元は隣りの金峯神社の別当寺だったそうです。金峯神社の境内案内地図には仁王門が描かれていたので近年まで仁王門があったことがわかります。現在は蔵王堂内に旧仁王門にあったと思われる仁王像が安置されています。像は天保3年に塗り直しの記録があるので少なくとも江戸時代まで遡ることが出来ます。
長野県上田市 鹿教湯温泉文殊堂(12月8日)
◆未知との遭遇部門
日本は思ったより広いのです。旅先で遭遇した仁王像カテゴリーに収まりきらないデータ解析不能な守護神像を紹介します。
秋田県大仙市 おにょさま(8月13日)
秋田県には人形道祖神という独特の民間信仰が存在します。大仙市では鍾馗(しょうき)様と呼ばれる集落を護る木の像があり、仁王様と習合してか地元では「おにょさま」「お仁王様」と呼ばれています。面の部分だけ祀られていたり寺社にあるわけではないので発見するのがなかなか大変なのですが、全身がある像で作風が似ている像があると聞いたので頑張って探してきました。
◆フォトジェニック部門
私の旅のメインの目的である写真撮影においてなかなか良く撮れたと思える作品を発表します。趣味の多重露光(一コマにシャッターを複数回押して像を重ねる技法)での作品が多めです。
千葉県市原市 上総国分寺(8月15日)
秋田県能代市 梅林寺(8月9日)
山形県上山市 高松観音(8月23日)
山形県鶴岡市 善宝寺(7月18日)
香川県善通寺市 金倉寺(8月31日)
長野県小布施町 玄照寺(12月10日)
長野県安曇野市 正福寺(12月9日)
香川県高松市 法然寺(10月30日)
★ベスト仁王大賞2023
いよいよベスト仁王大賞の発表です。2023年最も心に残った仁王像二組です。
山形県鶴岡市 松倉山馬頭観音(7月17日)★2度目の受賞
やはりここの仁王像を語らないわけにはいかないでしょう。4年ぶりに復活した股くぐり祭りです。流石に事前に今年は開催するのか問い合わせをしてから行きました。
もう一組は・・・
青森県弘前市 最勝院(8月10日)
やはりこの仁王像です。近年一番ニュースを賑わせた仁王像(私だけ?)なのでご存知の方も多いのでは。クラウドファンディングで資金を募りコロナ禍に修復が完成しました。修復の過程で像の中から承応2年(1653)に慶派の流れを汲む仏師により制作されたことを記す墨書(ぼくしょ)が見つかり、県内で制作年代が分かっている仁王像16体の中で最も古いものと判明しました。秋田の豪雨災害の復旧ボランティアに行った際に一日休みをいただいて会いに行きました。
はい、という訳で2023年のベストは山形の松倉山馬頭観音と青森の最勝院の像でした。2024年はどんな仁王さんに出会えるか楽しみです。新年早々大変な世の中ですがそれでもなんとか乗り越えて行きたいものです。私も力になれる機会があれば駆けつけたいと思います。また会う日まで。